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【2008年・すぐれたTV番組大賞・選考過程】

◆平成20年の「すぐれたTV番組大賞」は下記選考委員の討議により決定しました。その討議記録の一部を公開します。

【すぐれたTV番組大賞選考委員】
キタ・ミキ/タケイ・ミキ/ジャクリーヌ草壁/大久保タランティーノ清/瀬戸内弱小/桃色ダイオード中村/ノーベル田中/サーヤ黒田
客員選考委員・小池壮彦


キタミキ:「緒形拳が死んだからというわけではないんですが、大賞は「帽子」でした」
大久保 :「ちなみに放送基金文化賞のドラマ部門では、「風のガーデン」が本賞で「帽子」は優秀賞つまり次点だった」
桃中村 :「放送基金文化賞は、一般的によさそうなものを選ぶだけですね」
キタミキ:「だからNHKスペシャルでは「夫婦で挑んだ白夜の大岩壁」が本賞で、「あなたの笑顔を覚えていたい」が番組賞だったりする」
瀬戸内 :「うちの賞では、「夫婦で挑んだ白夜の大岩壁」は候補にもならなかった。なぜでしょう」
ジ草壁 :「世界最強と称された山野井泰史さんと妻の妙子さんの話ね。凍傷で指を失ってもなお未踏の大岩壁に挑むという」
サ黒田 :「素材は凄かったけど、撮り方がうまくなかったのよ。クレイジークレイマーにしか見えなかったから」
桃中村 :「素材が凄いのは誰もが認めるから、普通の賞なら大賞よね。でもうちの賞は料理の部分を重視するから」
ジ草壁 :「もし帽子がなかったら、大賞は「あなたの笑顔を覚えていたい」でしょうね」
サ黒田 :「そう。あの番組のドキュメンタリー的演出はすばらしかった。紀美さんが息子を保育園にあずけることに決める展開」
キタミキ:「高次脳機能障害の岡本紀美さんは、過去をどんどん忘れていくんですね。だから自分の子供を保育園に預けられない」
瀬戸内 :「子供のことを忘れるのが怖くて離れられないのね。でも、あるとき子供の態度で、決定的なことに気づくのね」
大久保 :「自分が忘れても、子供は自分のことを覚えていてくれる」
サ黒田 :「そのことに気づいたとき、心が安らいで、子供を保育園に預けることに決める。あそこはすばらしかった」
大久保 :「ああいう演出はあるべきなんだよ。じゃなけりゃドキュメンタリーではない
サ黒田 :「同じ脳障害の人を描いたドキュメンタリーでも、民放には絶対できないんですよね、ああいう展開は」
キタミキ:「篤姫も大賞を取る可能性はありましたね」
桃中村 :「宮崎あおいが中村梅雀と渡り合ったシーンは大賞ものだったと思う」
キタミキ:「ただ、後半凄くなった分、前半の物足りなさが惜しかった。風林火山は最初から最後まで凄かったからね」
ジ草壁 :「「闘うリハビリ」も素材としては大賞でもおかしくなかったけど、NHKならやるべき番組をやったまでという印象があった」
キタミキ:「「闘うリハビリ」「あなたの笑顔を覚えていたい」は特別賞でもいいぐらいなんだけど、そこがうちの賞は厳しい」
大久保 :「そういうジレンマは常にあるよ。何せすぐれた番組自体が少ないんだから」
瀬戸内 :「だからこそ、候補に上がるだけでも特別賞並みという位置づけでいいと思う」
タケイ :「そうね。その線で言えば、もし帽子がなかったら、大賞なしという結論だったかもよ」


【2008年・すぐれたTV番組大賞候補作】

11/24 NHK
 NHKスペシャル「あなたの笑顔を覚えていたい」
 ・・・ 三重県に住む岡本紀美さんは、10歳の時の交通事故が原因で、高次脳機能障害となった。
    重い記憶障害のため、ひどいときには数分前に自分が何をしていたのかも忘れてしまう。
    その紀美さんが、去年春、男の子を出産。手探りの子育てが始まった。待ちかまえていたのは、予想を超えた困難だった。
    ミルクやオムツの時間を忘れてしまう。子どもがなぜ泣いているのか理由がわからない。
    そして、家族にとって大切な「思い出」を共有していくことができない・・・。
    それでも紀美さんは様々な工夫で記憶を補いながら、懸命に我が子と向き合っている。(番組HPより)
    紀美さんが息子を保育園にあずけることに決める展開は絶妙だった。

10/15 NHK
 阿波スペシャル「阿波おどり2008」
 ・・・8月29日(土)と9月6日(土)に徳島県で放送された番組の全国放送。
    これも阿波踊りの模様を競馬中継のように実況しつつ、特色などをドキュメンタリー風に紹介。
    要は祭りの中継録画だが、テレビはこれでいいんだよ。

10/11 NHK
 博多祇園山笠2008
 ・・・7月15日に収録した博多祇園山笠の模様。
    競馬中継のように実況する形式が圧巻。

8/2&10/10(追悼再放送) NHK
 NHK広島放送局開局80周年ドラマ「帽子」
 ・・・佳品とは思っていたが、あらためて見て衝撃を受けた。

4/6〜9/26 NHK
 サラリーマンNEO
 ・・・気が付くと楽しみにしていたので。

2007/4/11〜 NHK
 SONGS
 ・・・第0回の寺尾聡からずっと様子を見ているが、大人の音楽番組としての徹底味は欠ける。
    したがって去年は候補見送りとなったが、安定したクオリティを1年以上続けており、候補入りを果たした。

8/31 NHK
 NHKスペシャル「幻のサメを探せ〜秘境 東京海底谷〜」
 ・・・東京湾の深海に棲む幻のサメ、「ミツクリザメ」。死ぬと顎が飛び出して凄まじい姿となるため、
    海外ではゴブリン・シャーク(悪魔のサメ)と呼ばれている。
    東京湾の深海に広がる大峡谷「東京海底谷(とうきょう・かいていこく)」で幻のサメの撮影に成功。

1/6〜 NHK
 篤姫
 ・・・序盤から候補にすべき演出・脚本の美点はあったが、宮崎あおいが天璋院になってからを見るまで候補は見送られていた。
    宮崎あおいが中村梅雀と渡り合った段階で候補決定した。多彩な挿入曲はすばらしい。

5/7 NHK
 NHKスペシャル「JUDOを学べ〜日本柔道 金メダルへの苦闘〜」
 ・・・全日本を制した石井慧がなぜあんな柔道をやったのか、この番組を見てよくわかった。
    単に勝てばいいと考えているわけではなく、あれでないと世界では戦えないわけだ。
    そういうことをきちんと伝えるのは、やはりNHKスペシャルしかないのか。

2/17 NHK
 ダーウィンが来た!生き物新伝説 第90回 “老人”パワーだ!チンパンジー
 ・・・以前から優れた内容の番組と思っていたが、このチンパンジーの話は、内容も絵の撮り方も、とりわけ秀逸だった。
   アフリカ・タンザニアの森に棲むチンパンジーの群れで、4年ぶりにリーダー争いが起きた話である。
   現リーダーは、優しい性格だが、ちょっと気が弱いところがある。対する挑戦者は、血気盛んな若者。
   日増しに緊張感が高まる群れに、ある日、強気に出た挑戦者が、リーダーに宣戦布告をした。
   そのとき、人間でいえば70歳になる長老のチンパンジーが、リーダー争いの裁定をしたのである。
   長老は群れの中で権力は持たないが、権威的存在であって、群れの中で尊敬を集めている。
   だからリーダー争いに際して、長老の裁定が群れの中での争いを避けるポイントになる。
   長老は考えた末に、若いチンパンジーのリーダー昇格を決め、世代交代を決断する。
   そしてリーダーの座を追われたチンパンジーに対しては、その母親のところに挨拶に行き、ちゃんとフォローするのである。
   チンパンジーの世界が、一種の象徴天皇制であったことを、この番組で知った。

2/14 NHK
 ドキュメント 日本の現場 明るい「遺影」
 ・・・滋賀県湖南市のデイサービスセンター「らく」に通うお年寄り50人の「遺影撮影会」が昨年12月から今年1月に行なわれた。
    所長の東川晃子さんが、お年寄りたちと触れ合う中で、多くの人が「死」を自然に受け止めて準備していることを知り企画した。
    カメラマンの大西暢夫さんは、折角なら最高の遺影を残したいと考え、お年寄りが語るそれぞれの人生にじっくり耳を傾ける。
    そして、その人の“最高の表情”が溢れ出す一瞬を捉えてシャッターを切る。 認知症になっても美しい妻の姿を留めたいと願う
    元企業戦士、健康な頃の写真より脳出血の後遺症と闘う現在の不自由な姿を 撮影してほしいと考える元医師、地元の怖いおばちゃん
    として知られた元万引き対策人の女性などが、人生をふりかえって語る中で見せる輝いた表情が写真に撮られていく。
    写真がなぜ人生を凝縮するのか。その理屈以前に、とにかくそうなのだという事実がある。この番組はちょっとした佳品だった。

2/10〜11 NHK
 NHKスペシャル「闘うリハビリ」
 ・・・これは驚くべき番組だった。
    10日の第1回「あなたはここまで再生できる〜脳がもつ可能性〜」では、脳卒中で右脳を切除した青年が歩けるようになった事例を紹介。
    リハビリは身体の運動機能を回復させるものというより、実は損傷した脳内の回路を再構築し、脳に再学習を促していることが解明された。
   11日の第2回「早期リハビリ “常識”への挑戦」では、脳卒中で倒れて直後の患者にリハビリを施す事例を紹介。
   従来は絶対だった「安静」が、逆に身体の機能を著しく落とすことが判明したからだという。
   いずれもこれまでの常識を覆すもので、人間の精神と肉体の関連から人間力の可能性に大きな問題を提起した番組だった。
   リハビリ中の長嶋茂雄のインタビューも力強いもので、この人物のカリスマ性をあらためて思い知らされた。
   ただ、番組で紹介されたような優れた医師は、多くの場合、身近にはいない。
   この番組を見た患者と、見ていない医師とでは、おそらく意思は疎通しない。意見が対立して絶望的な状況に陥る可能性がある。
   実際、番組で言われたようなことを実践している病院など、身近には存在しない。この現実をどうすればいいのか?

1/15 NHK
 プロフェッショナル仕事の流儀「妥協なき日々に、美は宿る 歌舞伎役者・坂東玉三郎」
 ・・・玉三郎の細部へのこだわりはを描いたドキュメンタリーとして見た。
    ナチュラルなドキュメンタリーで見たかった素材。ただし玉三郎の生の声が聞けたのはよかった。

1/9 NHK
 クローズアップ現代「80歳の決着 〜元兵士たちの日米野球〜」
 ・・・終戦から62年、日本・アメリカの両元兵士達 がハワイ真珠湾近くの野球場に集結。
    人生の終盤戦に「自分は一体誰と戦ったのか」、確認したいとの思いで集まった。
    憎しみやわだかまりを越え、本音で語りあうことはできるか。あの戦争は何だったのか。自らの人生とは…。
    ナチュラルなドキュメンタリーで見たかった素材。毒にも薬にもならないスタジオでの解説が必要だったか。
   ※このテーマは2/22のNHKプレミアム10で、純正のドキュメンタリーとして放映されるようです。


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